なぜ漢方薬は食前や食間に服用しないといけないの?
漢方薬は基本的に食前や食間に服用することが多いですよね。
例えばよく風邪のときに処方されるツムラ葛根湯について以下のように添付文書では書かれています。通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。もちろん葛根湯も食前又は食間に服用するよう書かれています。
しかし理由を調べようとしてもしっかりと理由が書かれている資料・サイトはありません。もちろん添付文書にもインタビューフォームにも書かれていません。
基本的に内服タイミングを指定している場合は理由が添付文書またはインタビューフォームに記載されているのに。
では漢方薬ではなぜ食前や食間と書かれているのか…
理由としては昔からこの方法で服用されているから!
私はこの結果にたどりつきました。そう先人の知恵。
食後だと「食事の影響により吸収が早まり安全性に問題が生じる」「胃内pHが変化するため吸収や薬効に影響がある」など色々なことは言われていますが、わかっていないことが多いみたいです。実際にメーカーさんに聞いても納得できる内容はありませんでした。
もちろんエビデンス重視でいけば今までの臨床試験や研究は食前や食間で行われているため、患者さんへは食前や食間で最初は説明しますが「食前や食間では飲み忘れてしまう」「薬を飲むときに何も胃に入っていないと気持ち悪くなる」などの方には食後服用を提案して問題ないと思います。
「附子」が配合されている漢方は食前や食間が無難
しかし中には、これは食前の方がいいだろうという漢方もあります。
その一つに「附子」が配合されている漢方です。附子には新陳代謝亢進作用、鎮痛作用、強心作用がありますが中毒症状として動悸、悪心、嘔吐があります。食後ですと吸収が速くなり中毒症状が出現する可能性を上げてしまいます。そのため附子が含まれる漢方は食前や食間に服用することをお勧めします。
〇 附子が入っている主なツムラ漢方薬
● ツムラ八味地黄丸(はちみじおうがん)
● ツムラ桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
● ツムラ真武湯(しんぶとう)
● ツムラ牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
● ツムラ麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
食後服用は基本的にしないの?
食後服用も考慮する場合があります。
それは胃に負担のかかりやすい漢方を服用するときです。当然食後ですと胃に内容物がありますので胃の負担は軽減されます。胃に負担をかけやすい生薬として「地黄」「麻黄」があります。この2剤のどちらかが配合された漢方を服用されている方で胃の具合が悪くなったと訴える患者さんがいらっしゃいましたら、食後服用を勧めてあげてください。もしくは胃が弱い方に必要な場合は最初から食後を提案することも大切です。
〇 地黄が入っている主なツムラ漢方薬
● ツムラ八味地黄丸(はちみじおうがん)
● ツムラ十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
● ツムラ四物湯(しもつとう)
● ツムラ竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)
● ツムラ牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
〇 麻黄が入っている主なツムラ漢方薬
● ツムラ葛根湯(かっこんとう)
● ツム小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
● ツムラ麻黄湯(まおうとう)
● ツムラ麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
以上です。
附子と地黄や麻黄が混ざっているものに関しては最初は食前又は食間で服用してもらい、消化器症状が出現する場合は食後に変更するのがいいかもしれませんね。
少しでも患者さんの役に立つ資料になれば幸いです。
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